財団の活動

研究の助成(第5期)

公益財団法人 大隅基礎科学創成財団
第5期(2021年度)研究助成 選考結果について

大隅基礎科学創成財団の第5期研究助成では、一般生物学研究(基礎科学(一般))、及び酵母を対象とした基礎研究(基礎科学(酵母))の公募を行いました。2021年5月6日~6月30日の公募期間に全国の研究者から、基礎科学(一般)152件、(酵母)31件の申請を受け付けました。本財団の選考委員による厳正な審査を行って助成候補を選定し、理事会の承認を得て、基礎科学(一般)10件、(酵母)3件に決定しました。

今回決定した助成金額(助成期間2年)は、基礎科学(一般)4,970万円、基礎科学(酵母)1,200万円となりました。

基礎科学(一般) 10件

(氏名五十音順)

氏名 所属 研究課題 選考委員会評価
阿部 光知 東京大学 花成ホルモン・フロリゲンの新奇制御階層の解明 FT輸送メカニズムに基づく花成制御機構の解明を目指す独自性の高い研究である。研究計画も的確であり、新たな展開が期待できる。原形質連絡は植物の細胞間シグナル伝達の基盤となるが制御機構が未知である。申請者は独自に遺伝学的解析から制御因子を同定しており、大きな研究展開が期待できる。
伊藤 久美子 名古屋大学 時計タンパク質KaiCの2つのATPaseによる機械的な概日時計機構 研究計画は緻密で具体的であり成果が期待できる。申請者は、今まで時計タンパク質の謎に取り組んできたグループの中にいて、精緻で美しい解析を行ってきた。PIとなったこの研究計画でも力を発揮することを期待して採択する。機械式振り子時計とのアナロジーの仮説を、一連の分子間相互作用として説明できることを期待する。
佐藤 明子 広島大学 積荷タンパク質の選別輸送機構 ーリサイクリングエンドソームの役割ー テーマそのものは一見、研究され尽くしたものと見えるが、丁寧な実験で独自の発見を掴んでいる研究企画である。ショウジョウバエを用いた研究実績に基づいて新たにHela細胞を用いてポストゴルジ輸送の詳細を明らかにする研究で、イメージングに関する戦略も練られている。細胞生物学全体における新規性も主張できる成果を期待する。
瀬川 勝盛 東京医科歯科大学 膜リン脂質の恒常性維持の分子機構 これまでの研究成果から膜脂質の分子運動・状態を感知する分子機構が存在すると想定し、新たに開発したスクリーニング系でその分子実体の同定を試みる研究である。スフィンゴミエリン合成酵素の誘導は単にいわゆるsuppression mutationの可能性があるが、なぜ膜脂質の非対称性の乱れが細胞に障害を起こすのか、という研究も視野にはいっているものと期待する。
高橋 俊一 琉球大学 エンドサイトーシスの許容取込サイズの向上による共生能力獲得機構の解明 サンゴの共生褐虫藻の細胞内取り込みは褐虫藻のサイズが小さいときに可能であるように見える、という独自の観察からその分子細胞生物学的な機構を追究する興味ある研究課題である。これが遺伝子によって制御されているのか、であればその遺伝子はなにか、そして本当に「エンドサイトーシス」によるものか、などクリアな解明を期待する。
千葉 由佳子 北海道大学 植物時計遺伝子のuORFを介した時間依存的な翻訳抑制機構 植物の時計遺伝子上流領域におけるリボソーム停滞が時計遺伝子の発現制御に関わるとの興味深い現象を追求するもので、日本発の優れた研究になる可能性がある。生理的意義についても新しい発見を期待する。
月原 冨武 兵庫県立大学 精密結晶構造解析によるチトクロムc酸化酵素の作動機構の解明 シトクローム酸化酵素の反応機構について学界は真二つに割れている。この申請は妥協を許さない構造研究によりその論争に最終的な決着をつけようという企画である。申請額は必要最小限であり、当財団の支援として意義がある。
藤原 崇之 国立遺伝学研究所 単細胞真核藻類のエネルギー生産と消費戦略の解明に向けたシアニジウム研究系の開発 シアニジウムの実験系を開発・整備し環境応答研究のモデルを拡大するという点で独自性が高い研究企画であり、ゲノムレベルでの研究も着実に進めている。シアニジウムの実験系でこそできる発見を期待する。
山口 暢俊 奈良先端科学技術大学院大学 花弁基部細胞の分化による脱離制御機構の解明 花弁基部の脱離機構は葉の脱離とは違う可能性があり、新しい生理現象の可能性が高い。解析技術も優れた独創的な研究企画である。独自の発見をベースとした研究課題であり,これまでの着実な研究姿勢と研究計画内容からみて,研究の発展は期待できる。核が消失するなど大きく細胞の状態が変わり多数の遺伝子発現が大きく変化し、どれが原因で結果なのか、判別に工夫を期待する。
渡邉 正勝 大阪大学 ゼブラフィッシュ体表模様形成の分子機構の解明 独自の研究成果に基づき、コネキシンを介する整流性ギャップ結合による反応拡散モデルを提唱する独創性の高い研究である。ゼブラフィッシュ表皮の模様形成のしくみをギャップジャンクションを介した細胞間相互作用で説明する優れた研究企画である。
基礎科学(酵母) 3件

(氏名五十音順)

氏名 所属 研究課題 選考委員会評価
井沢 真吾 京都工芸繊維大学 酵母を酵母たらしめる優れたエタノールストレス対処能力の多面的解析 酵母のエタノール耐性は、生理現象ではないが、醸造業界には重要なテーマ。しかし、その耐性機構は多面的、複雑でなかなかすっきりした結論が得られていない。申請者が推定する、従来見落とされていた緩やかなストレス応答の過程は、アルコール以外のストレスに対しても類似の機構が存在することが予想される。
谷 元洋 九州大学 生体膜スフィンゴ脂質の異常に対する酵母の防御応答戦略の解明 複合スフィンゴ脂質は、真核生物の生体膜の機能維持膜タンパク質の活性調節、膜ダイナミクス調節等 において要となる分子。スフィンゴ脂質代謝異常により引き起こされる複数のシグナル伝達の変化を、誤作動及び救済のための積極的シグナルに切り分けようという着想は興味深い。 HOG 経路の活性化が一部関与していることも新たな発見。
星田 尚司 山口大学 ヌクレオチド配列選択的に働き,イントロンが回避させる発現抑制機構の解析とその生理学的・進化的意義 イントロンが関わるとされてきた遺伝子発現について、新規の調節機構を発見、酵母における生理的意義、進化との関連の解析は、新分野を拓き、新しいコンセプトの確立になり得る。